私の故郷、山形県米沢市。
その米沢から国道(酷道)13号線を北上して、山形市の手前に
ある、斉藤茂吉の故郷上山市。ここも温泉が有名なところだ。
その一つ、上山葉山温泉にある「名月荘」。
蔵王連峰を見晴らす高台に4000坪の敷地を構える温泉旅館と
いうよりリゾート感覚の宿。
この広ーいお庭に夜のとばりがおりて、一面の濃い群青色、
蒼い山影、そこに煌々と満月が昇ってくる…。
私の頭の中に絵が浮かぶ。そのような絵を描く人物が思い浮かぶ。
日本画家 福王寺一彦。
文化勲章受章して2年前に亡くなった米沢市出身の画家、
福王寺法林の次男坊であり、私の従兄弟。
人生のライフワークとして「ヒマラヤ」シリーズに取組んだ
豪放な父と違い、繊細な福王寺ブルーを追求する一彦。
そして、月。彼が好んで描くものだ。
幼き頃より父法林に師事し、1978年日本美術院展入選から本格
的に日本画の道を歩み始め、次代の院展を牽引する役割をおって
いるように思うのだが、それを証明するかのように、2010年当時
最年少で、日本芸術院会員になり話題になった。
いまやアートなしには、地方活性化も各種イベントも語れなく
なっている現状だが、日本画自体はどうだろうか?
私は、停滞しているように感じるのだが…。
そんな中、一彦は文化庁と日本芸術院共催による「子ども夢・
アート・アカデミー日本画教室」の先生役として、全国の小学校を
巡回し、直接子供たちに日本画の話や、岩絵の具とニカワの溶き方、
日本画の描き方を手ほどきしているのだという。
これはとても良いことだ。小さいころから本物を見る、本物のプ
ロの手ほどきをうける機会を与えられることは、本当に素晴らしい
と思う。この中から、将来、院展に出品する子や日本画コレクター
が現われるかもしれない。
月といえば、いまや仰ぎ見る存在となった福王寺一彦を想う。
22世紀へ、日本画壇を引っ張っていってほしいものだ。
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