わが友、かしぶち哲郎

  今年はスーパームーンの当たり年だった。私もムーン、

月に思いを馳せることが多かった一年だった。

 それは、昨年1217日、満月の夜に逝ったかしぶち哲郎

ことがあったからだろう。

 

 ムーンライダーズドラマー、作曲家であり、石川セリ、

大貫妙子、矢野顕子、斉藤由貴等のプロデュース、「釣り

バカ日誌」シリーズ110回の音楽担当、そしてジェーン・

バーキンに憧れ続けた男だった。 

 最期まで色っぽかった男。

 

 彼とは40数年来の友人だ。

 

 建築家をめざし栃木から上京したかしぶちと、ミュージ

シャンをめざし雪深い田舎から出てきた私。

ある時2人の人生がクロス、友人となり、気が付けば彼が

ミュージシャンで私がインテリアデザイナーの道を歩んで

いた。

 

 彼も王道は歩まなかった。ムーンライダーズは、かなり

ディープでコアなファンがいるが、いわゆるメジャーでは

ないし、それを目指してもいなかった。

 かしぶち自身も、いつも若い女性を連れて、一見華やか

そうにしていたが、彼のライブはホントにディープでコア、

オタクっぽい男たちが最前列に陣取っていた。

 男に愛された男でもあった。

 

 規模を追わない生き方をしたのだな、かしぶちは。

 そこは私も同じだ。生きる世界は違っても、付き合いが

続いたのは、互いの中に同じ空気を感じ取っていたからかも

しれない。

 

 0611月、私は若い人に「無駄・みちくさのすゝめ」を推

奨すべくラジオ未来塾を開講した。

  それに先立つ9月、表参道と明治通りがクロスする街角に

できた“インターネット・ラジオ”収録スタジオに、塾長の

私とコーチのかしぶち、二人で押しかけ出演したことがあった。

 

 先述したように、音楽とデザイン、互いの生業が反転した

とや、期待に反して食えないミュージシャンの道を選んだ

我が身の不孝を、成長した一人息子がまるで阿吽の呼吸で建

築の勉強を始め、隔世で償ってくれたことなどを、雄弁に喜々

として語った。

 息子と同じ年頃の若い人に語り聞かせることが。うれしかっ

たようだ。 初めてみる親父としての顔。

 

  111111日、満月の日に、結成35周年のムーンライダー

無期限活動休止宣言。

 

 かしぶちは、気落ちしないはずはないだろうけれど、淡々と

過ごしているように見えて安心した。

 

 それから少し日が経った、13年夏、ある用件で連絡を入れて

いたが、珍しく音沙汰なし…。

レコーディング・スタジオに籠ったのか? 

そんな風に思っていた11月半ばのある晩、突然かしぶちから電

話があった。

 「これからそっちへ行っていいか?」。

おい、おい、夜型人間のかしぶちには宵の口の時間だろうが、

すっかり朝型人間になった私にはもう眠たくなる時間。

「また今度にしよう、連絡する」で電話を切ってしまった。

 それが最期とは想像だにせず。

 それが悔やまれてならないのだ。 それが悔やまれて…。

 

 20131217日、満月の夜、ムーンライダーズかしぶち哲郎

逝った。

 あれから10か月、私は、まだかしぶち哲郎の死を受け入れら

ないでいる。

 

 何気なくかしぶち哲郎のWEBサイトを開いてみた。

 まだ、あった。

 

 かしぶち哲郎作曲の、独特のヨーロッパテイストの曲が流れ

ている。ギャラリのページ アーキテクチャー:1972年とある。

きっと卒業制作として提出したのだろう、野外コンサートホー

ルの設計図が3枚。 

 見事に「建築と音楽」を融合させてたじゃないか。

 

 2006111日 あ、ラジオ塾と題したコラムがあった!

 ラジオ未来塾正式スタートの第1回目ゲストで来てくれた、

その時の印象を綴っていた。

 改めて読み返すと、彼の弾むような気持ち、そして全盲と

なった私への激励と温かなまなざし。

 

 こんなふうに思っていたのか、かしぶちは…。

 文字がかすむ…、あー、もう読めない…。

 

 私の感傷で終わりたくはないが、全文記させてくれ。

 友、かしぶち哲郎!

 

 

November 01, 2006

 

僕の30年来の友人である建築家の渡部隆氏が『ラジオ塾』を開講した。
先日、第一回目のコーチとして招かれ、若者たちと「建築と音楽」について話をした。そこは、集う人の出会いの場であり、遊びの場であり、学びの場であった。何かを得て世の中に出ていく"若者たち"のプラットホームの様な『ラジオ塾』に共感した。ときには時間を忘れ、見切り発車して目的地のない旅に出るのもいいかもしれない。
突然の病により光を失った彼は逆境をものともせず言葉だけの世界へと見事に思考をシフトチェンジした。これから会をかさねるごとに、そのフォーマットは形成されていくだろう。今の感性を大切にさらなる発展を期待している。

 

 

 

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コメント: 1
  • #1

    Rolande Croft (金曜日, 03 2月 2017 20:32)


    You really make it seem so easy with your presentation but I find this matter to be really something which I think I would never understand. It seems too complicated and very broad for me. I'm looking forward for your next post, I will try to get the hang of it!