大坊珈琲店

「大坊珈琲店」をご存知だろか?

 

表参道交差点を外苑側に歩を進めたところにある、古い

小さな ビルの2階にある琥珀色の喫茶店だ。

知る人ぞ知る表参道の名物喫茶店。

 

この大坊珈琲店が、ビル建替えのため年内で営業終了との

こと。

 

思えば、表参道にも再開発の波が押し寄せて奇跡的に

残ったといえるビル。

近くに行くたびに、「あーぁ、まだ健在だ、営業してい

る」と安堵したものだった。

 

久しぶりに行ってみた。

 

狭い階段に気後れして足が遠のいてしまったのだが、

合いを入れ上がってみると、意外に余裕を感じさせる。

「珈琲道大坊流」の茶室だ、ここは。階段はにじり口だ。

 

中に入ると、何事もないように落ち着いた佇まいがある。

大きく傾いた黒光りする一枚板のカウンター席で、店主の

お点前を拝見するかの如く座る先客たち。

 

邪道かもしれないが、ミルクコーヒーを注文。

ほどなくして、大ぶりのお茶碗に入ったミルクコーヒー

出される。

「お点前頂戴いたします」と言うかのような雰囲気で

一服。

このお茶碗は、「大坊焼」というオリジナルで、15年前、

僕も買い求め、以来毎日、牛乳や豆乳をたっぷり入れて

ミルクコーヒーを飲んでいる。

 

思うに、いまのカフェや飲食店、物販のお店もフレンド

リーであることが第一に求められているようだ。

店側もだし、さらにはお客も。

心身ともに健やかな時でないと、カフェには行けないな

と思うのは、生来、ひねくれモノだからだろうか?

 

その点、大坊珈琲店は心地よい。お客と店主側の間合い。

凛とした緊張感。それが心地よいのだ。

おなじみさんにも、一見さんにも区別のない応対。

お客たちも私語を慎み、コーヒー一服の至極の時間を

堪能している

 

こういう店が間もなく姿を消す。

惜しい。